グーゴル (Googol) は自然数\(10^{100}\)に付けられた名前である[1]。つまり、十進数表記で1の後に0が100個付いた101桁の数であり、\(1\underbrace{000\dots000}_{100}\)である。
概要[]
グーゴルが名付けられたのは1920年であり、エドワード・カスナー (Edward Kasner) の甥ミルトン・シロッタ (Milton Sirotta) が当時9歳の時に考案したと言われている。その存在が一般に知られるようになったのは、1940年にカスナーが自著 "Mathematics and the Imagination" 内にて、\(10^{\text{Googol}}=10^{10^{100}}\)の数であるグーゴルプレックスと共に取り上げたためである[2]。グーゴルは現在では巨大数の代名詞的存在であり、Googology (巨大数論) の語源にもなっている。
他の表現[]
1グーゴル\(=10^{100}\)を他の記法や命数法で表現することは可能であるが、グーゴル以外の名称が使われることはほとんどない。
- 現在の日本で使われている数の単位は『塵劫記』の1634年 (寛永11年) 版に基づいており、1グーゴルを表す方法はない[3]。
- 『算法統宗』に基づけば、億から万万進となっているため、一万恒河沙に等しい[3]。
- 『大方広仏華厳経』にある数で表せば頻婆羅と矜羯羅の間である[3][4]。(\(10^{56}<1\text{Googol}<10^{112}\))
- ショートスケールではTen-duotrigintillion、ロングスケールではTen-sexdecilliardである。
- ハイパーE表記では\(E100=E100\#1\)である。グッピー連隊の正式メンバーではないものの、グーゴルやそれに由来する変名は多数使用されており、事実上の基本となる数の1つである。またグッピージャン (グッピーディング、Guppyding) に等しい。
他の記法[]
グーゴルを表す方法は多数あるため、以下は正確に一致するもののみを挙げる。上記までに上がった記法は省略する。
記法 | 値 |
---|---|
矢印表記 | \(10\uparrow100\) |
チェーン表記 | \(10\rightarrow100\) |
下矢印表記 | \(10\downarrow100\) |
BEAF | \(\{10,100\}\) |
バードの配列表記 | \(\{10,100\}\) |
強配列表記 | \(\text{s}(10,100)\) |
緩増加関数 | \(g_{\omega^{\omega^{2}}}(10)\) |
グーゴルで表せるもの[]
\(10^{100}\)は日常会話はもちろん、自然科学の分野でも中々登場しない、いわゆる "天文学的な数" であるが、いくつかは1グーゴル程度の値を挙げることも可能である。
- 観測可能な宇宙の中に存在する、暗黒物質と暗黒エネルギーを除いた全ての素粒子の数は\(10^{97}\)程度という推定がある[5]。
- 現在知られている最大の超大質量ブラックホールがホーキング放射により完全に蒸発するまでの時間はほぼ\(10^{100}\)年である。実際にはこの後もイベントが存在する可能性があるが、一般的な宇宙に関する年表はここで終了する。
- プランク単位系では、プランク密度の\(\rho_{P}=5.15500\times10^{96}\text{kg/m}^3\)、プランク圧力の\(p_{P}=4.63309\times10^{113}\text{Pa}\)、プランク放射強度の\(L_{P}=1.38893\times10^{122}\text{W/m}^{2}\)がある。
\(70!\approx1.197857\times10^{100}\)であり、1グーゴルとの差は約20%である。
Googleとの関連[]
ビック・テックのGoogleの社名はグーゴルに由来する[6]。理由として、グーゴルという巨大数が、インターネット上の情報という膨大な数のモノを検索する検索エンジンにふさわしい名前と考え、また上記の通り\(10^{100}\)を超える数のモノが宇宙には中々ないためである[7]。その他、6文字という文字の短さや、響きのクールさも理由として挙げられている[8]
GoogleはGoogolのスペルミスに由来し、一般的には「ドメイン名登録の際に誤って登録した」と言われているものの、参照先によってその由来はわずかにニュアンスが異なる。Googleの59番目の社員Douglas Edwardsの回顧録 "I'm Feeling Lucky: The Confessions of Google Employee Number 59" によれば、当時社名をGoogolにしようとしたところ、 "googol.com" が既に使用されていたことに加え、創業者の1人のラリー・ペイジが数字は商標登録できないことを指摘し、スペルを変えたと述べている[9][10]。一方でDavid Kollerが、Googleの誕生したスタンフォード大学のGates Computer Science Buildingにいたに友人や同僚から集めた証言によれば、検索エンジンにふさわしい社名を探っていた際の誤りがきっかけだとしている。最初にSean Andersonがグーゴルプレックスを挙げた後、ペイジがグーゴルに短縮したものを伝え、ドメイン登録について検索した。この時Andersonは誤って "googol.com" と入力したが、ペイジはその誤った名前を気に入り、数時間後にそれで登録したと証言している[11][10]。いずれの説明を取るにしても、単純ミスによるスペルの誤りという一般的な説やニュアンスとは異なる内容である。
出典[]
- ↑ Vincenzo Origlio & Eric W. Weisstein. "Googol". Wolfram MathWorld.
- ↑ Edward Kasner and James R. Newman. (1940) "Mathematics and the Imagination". Simon & Schuster.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 高杉親知. (Oct 2, 2002) "無量大数の彼方へ". 思索の遊び場.
- ↑ "T10n0279_045 大方廣佛華嚴經 第45卷, 阿僧祇品第三十". CBETA 漢文大藏經.
- ↑ Robert Munafo. "1097 (fundamental particles in the universe)". Notable Properties of Specific Numbers.
- ↑ "ガレージから Googleplex へ". Google.
- ↑ Rachael Hanley. (Feb 12, 2003) "From Googol to Google:". The Stanford Daily . (Internet Archive)
- ↑ "Google! Inc. BETA". Google Inc. (Internet Archive)
- ↑ Douglas Edwards. (2011) "I'm Feeling Lucky: The Confessions of Google Employee Number 59". Mariner Books; Reprint edition.
- ↑ 10.0 10.1 佐藤由紀子. (Aug 4, 2011) "Googleの社名は「スペルミスから生まれた」というのはちょっと違うらしい". 海外速報部ログ.
- ↑ David Koller. (Jan, 2004) "Origin of the name "Google"". Stanford Computer Graphics Laboratory.