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フェルマー数 (Fermat number) とは、\(0\)を含む任意の正の整数\(n\geqq0\)において\(F_{n}=2^{2^{n}}+1\)で表される数のことである。名称は、1640年にこの数についての性質に言及したピエール・ド・フェルマーに因む[1]

概要[]

ピエール・ド・フェルマーは1650年、\(0\)を含む任意の正の整数\(n\geqq0\)について、\(F_{n}=2^{2^{n}}+1\)は全て素数であると予想した。これが今日においてフェルマー数と呼ばれる理由である。しかしながらレオンハルト・オイラーは、1732年に\(F_{5}=4294967297=641\times6700417\)が合成数であるという反例を示し、フェルマーの予想は否定的に証明された[1]。これまでの探索で、フェルマー数のうちフェルマー素数 (Fermat prime) であるものは\(F_{0}\)から\(F_{4}\)に限られ、\(F_{5}\)から\(F_{32}\)までは全てフェルマー合成数であることが判明している。これ以外のフェルマー数に素数が存在するのかどうか、あるいはフェルマー素数とフェルマー合成数の少なくともどちらか一方が無数に存在するのかは未解決問題である[2]

フェルマー数の素数判定にはぺピン検定などが利用されるが、サイズが極めて多くなるために一般に素数判定が困難である。フェルマー数の素因数は、その形がプロス素数\(k\times2^{n}+1\) (\(k\)は奇数、\(2^{n}>k\)) の形に限られるため、全てのフェルマー数の素因数はプロス素数である[2]。そしてプロス素数のうち、あるフェルマー数を割り切ることができると判明したものはフェルマー素因数 (Fermat Divisor) と呼ばれる[3][4][5]。フェルマー数の中には、\(F_{20}\)や\(F_{24}\)のように、素因数が1つも判明していないフェルマー合成数がある。逆に\(7\times2^{18233956}+1\)というプロス素数は、\(F_{18233954}=2^{2^{18233954}}+1\)という極端に大きなフェルマー数のフェルマー素因数であることが判明している[5][4]

素数定理に基づく素数の分布により、フェルマー素数は\(F_{4}\)で最後であり、新たなフェルマー素数が存在する確率は10億分の1程度 (厳密な議論バージョンでは10億分の1未満[6]) はないかという議論がある。ただしこれはヒューリスティックな議論であり、フェルマー素数がそれ以上存在しないという証明ではない[1]

\[\displaystyle\sum_{m\geqq33}\frac{1}{\ln F_{n}}<\frac{1}{\ln2}\sum_{n\geqq33}\frac{1}{\log_{2}(2^{2^{n}})}=\frac{1}{\ln2}2^{-32}<3.36\times10^{-10}\]

主なフェルマー数の一覧[]

\(F_{n}\) 近似値 素数性 素因数の数 備考
\(F_{0}=2^{2^{0}}+1\) \(=3\) 素数 1 (全)[7]
\(F_{1}=2^{2^{1}}+1\) \(=5\) 素数 1 (全)[7]
\(F_{2}=2^{2^{2}}+1\) \(=17\) 素数 1 (全)[7] これ以降のフェルマー数の末尾は全て7。
\(F_{3}=2^{2^{3}}+1\) \(=257\) 素数 1 (全)[7]
\(F_{4}=2^{2^{4}}+1\) \(=65537\) 素数 1 (全)[7] 知られている最大のフェルマー素数[6]
\(F_{5}=2^{2^{5}}+1\) \(=4294697297\) 合成数 2 (全)[5]
\(F_{6}=2^{2^{6}}+1\) \(=18446744073709551617\) 合成数 2 (全)[5]
\(F_{7}=2^{2^{7}}+1\) \(\approx3.40282\times10^{38}\) 合成数 2 (全)[5]
\(F_{8}=2^{2^{8}}+1\) \(\approx1.15792\times10^{77}\) 合成数 2 (全)[5]
\(F_{9}=2^{2^{9}}+1\) \(\approx1.34078\times10^{154}\) 合成数 3 (全)[5]
\(F_{10}=2^{2^{10}}+1\) \(\approx1.79769\times10^{308}\) 合成数 4 (全)[5]
\(F_{11}=2^{2^{11}}+1\) \(\approx3.23170\times10^{616}\) 合成数 5 (全)[5] 素因数が全て判明している最大のフェルマー数。
\(F_{12}=2^{2^{12}}+1\) \(\approx1.04439\times10^{1233}\) 合成数 6[5] 完全に素因数分解されていない最小のフェルマー数。
\(F_{20}=2^{2^{20}}+1\) \(\approx6.74114\times10^{315652}\) 合成数 0[5] 合成数と判明しているが、素因数が1つも判明していない。
\(F_{24}=2^{2^{24}}+1\) \(\approx1.81859\times10^{5050445}\) 合成数 0[5] 合成数と判明しているが、素因数が1つも判明していない。
\(F_{33}=2^{2^{33}}+1\) \(\approx9.63027\times10^{2585827972}\) 不明 0[5] 素数か合成数か不明な最小のフェルマー数。
\(F_{18233954}=2^{2^{18233954}}+1\) \(\approx3.73394\times10^{10^{5488966}}\) 合成数 1[5] 素因数が1つ以上判明している最大のフェルマー数[4]

一般フェルマー数[]

任意の互いに素な整数\(a>b>0\)において\(a^{2^{n}}+b^{2^{n}}\)の形で表される整数を一般フェルマー数 (Generalized Fermat number) と呼ぶ。ただし通常のフェルマー数の形式に則り、\(GF_{(a,n)}=a^{2^{n}}+1\)の形で現れる整数を一般フェルマー数と呼ぶ方が一般的である[8]。フェルマー数と同じく、一般フェルマー素数を考えることができる[9]。フェルマー素数と同じく、一般フェルマー素数が無数に存在するかは未解決問題である。一般フェルマー素数が無数に存在することを示せば、ランダウの問題の4番目「\(n^{2}+1\)の形を持つ素数は無数に存在するか?」を肯定的に解決することができる[10]

大きな一般フェルマー素数TOP20 (2022年10月27日時点)[11]
\(GF_{(a,n)}\) 近似値
1 \(GF_{(1963736,20)}\) \(1963736^{2^{20}}+1\) \(\sim8.06516\times10^{6598775}\)
2 \(GF_{(1951734,20)}\) \(1951734^{2^{20}}+1\) \(\sim1.25948\times10^{6595984}\)
3 \(GF_{(1059094,20)}\) \(1059094^{2^{20}}+1\) \(\sim5.32495\times10^{6317601}\)
4 \(GF_{(919444,20)}\) \(919444^{2^{20}}+1\) \(\sim3.07064\times10^{6253209}\)
5 \(GF_{\left(5\times2^{6859633},1\right)}\) \(\left(5\times2^{6859633}\right)^{2^{1}}+1\) \(\sim9.60358\times10^{4129911}\)
6 \(GF_{\left(3\times2^{3427068},2\right)}\) \(\left(3\times2^{3427068}\right)^{2^{2}}+1\) \(\sim9.31549\times10^{4126602}\)
7 \(GF_{\left(3\times2^{3367646},2\right)}\) \(\left(3\times2^{3367646}\right)^{2^{2}}+1\) \(\sim5.64412\times10^{4055051}\)
8 \(GF_{(4896418,19)}\) \(4896418^{2^{19}}+1\) \(\sim1.02698\times10^{3507423}\)
9 \(GF_{(3638450,19)}\) \(3638450^{2^{19}}+1\) \(\sim5.53836\times10^{3439809}\)
10 \(GF_{\left(3\times2^{5683143},1\right)}\) \(\left(3\times2^{5683143}\right)^{2^{1}}+1\) \(\sim9.53977\times10^{3421593}\)
11 \(GF_{(3214654,19)}\) \(3214654^{2^{19}}+1\) \(\sim2.47850\times10^{3411612}\)
12 \(GF_{(2985036,19)}\) \(2985036^{2^{19}}+1\) \(\sim2.30044\times10^{3394738}\)
13 \(GF_{(2877652,19)}\) \(2877652^{2^{19}}+1\) \(\sim1.81101\times10^{3386396}\)
14 \(GF_{(2788032,19)}\) \(2788032^{2^{19}}+1\) \(\sim1.85744\times10^{3379192}\)
15 \(GF_{(2733014,19)}\) \(2733014^{2^{19}}+1\) \(\sim1.12788\times10^{3374654}\)
16 \(GF_{(2312092,19)}\) \(2312092^{2^{19}}+1\) \(\sim3.24822\times10^{3336571}\)
17 \(GF_{(2061748,19)}\) \(2061748^{2^{19}}+1\) \(\sim8.80619\times10^{3310477}\)
18 \(GF_{(1880370,19)}\) \(1880370^{2^{19}}+1\) \(\sim3.00923\times10^{3289510}\)
19 \(GF_{(475856,19)}\) \(475856^{2^{19}}+1\) \(\sim1.99972\times10^{2976632}\)
20 \(GF_{(356926,19)}\) \(356926^{2^{19}}+1\) \(\sim1.29251\times10^{2911150}\)

その他[]

フェルマー数は矢印表記で\((2 \uparrow 2 \uparrow n)+1 = ((2 \uparrow)^{2} n)+1\)で等価に表せる。

フェルマー数はプロス数の特殊なケースと考えることもできる。また上記の通り、フェルマー数の素因数はプロス素数に限られる。

カレン数の一部は一般フェルマー数である。

定規とコンパスのみで作図可能な正n角形の必要十分条件は、nが任意の2の累乗数であるか、異なるフェルマー素数と2の累乗数の積である時である。よって作図可能な正多角形で、知られているもののうち最多の素数個の角を持つ正多角形は正六万五千五百三十七角形である[1]

出典[]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 "Fermat number". The PrimePages.
  2. 2.0 2.1 "Fermat Number". Wolfram MathWorld.
  3. "Fermat divisor". PrimePages.
  4. 4.0 4.1 4.2 "Fermat Divisors". PrimePages.
  5. 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 5.13 Wilfrid Keller. "Prime factors k · 2n + 1 of Fermat numbers Fm and complete factoring status". Proth Search Page.
  6. 6.0 6.1 Kent D. Boklan & John H. Conway. "Expect at most one billionth of a new Fermat Prime!". arXiv, math.NT, 2016;
  7. 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 "A019434: Fermat primes: primes of the form 2^(2^k) + 1, for some k >= 0". The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences.
  8. "Generalized Fermat Number". Wolfram MathWorld.
  9. "generalized Fermat prime". The PrimePages.
  10. "Primes of the form k^2 + 1". The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences.
  11. "Generalized Fermat". The PrimePages.

関連項目[]

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