注意:この記事には未定義概念への頻繁な言及が含まれます。
ここに載せた「階差表記」について考えたら結構面白かったので書き殴ります。
定義[]
階差表記は、数列を初項と階差を用いて以下の通りに書き表す表記です。
- \(a_1,a_2,a_3,a_4...=a_1[a_2-a_1,a_3-a_2,a_4-a_3...]\)
- 例:2,0,1,9,1,2,0,2=2[-2,1,8,-8,1,-2,2]
階差数列もまた数列なので、階差表記はネストすることができます。
- 例:1,3,8,20,48=1[2,5,12,28]=1[2[3,7,16]]=1[2[3[4,9]]]=1[2[3[4[5]]]]
ネストした際、各階層の初項を集めた新たな数列(上記の例では1,2,3,4,5)を考えることができ、その階差数列を考えることができます。そこで、「ネスト階差表記の初項の階差数列」を表す「レベル2の階差表記」を以下のように定義します。
- \(a_1[a_2[a_3[a_4[...]]]]=a_1[a_2-a_1,a_3-a_2,a_4-a_3...]_2\)
- 例:2,0,1,9,1,2,0,2=2[-2[3[4[-27[75[-160[301]]]]]]]=2[-4,5,1,-31,102,-235,461]₂
当然、これもネストできます。そこで、「レベル\(n\)のネスト階差表記の初項の階差数列」を表す「レベル\(n+1\)の階差表記」を同様に定義します。また、最初に定義した添字無しの階差表記をレベル1の階差表記として再定義します。
性質[]
- \(a[b]_c=a,ac+b\)
- \(a_1[a_2,a_3,a_4...]_{n+1}=a_1[a_1+a_2[a_3,a_4...]_{n+1}]_n\)
- 項数保存則:初項を含めた項数は不変である。
これが無いと手計算なんてやってられない。
Y数列と階差表記[]
高レベル階差表記を作ったのは、元々Y数列のY(1,3)以降の挙動をコンパクトな形で可視化する為でした。そこで、実際にY数列の展開(構想上ほぼ確定していると思われる部分に限定)を階差表記で書き直してみます。
- Y(1,3)=Y(1,2,4,8,16...)
- Y(1[1]₂)=Y(1[1[1[1[1[...]₁]₁]₁]₁]₁)
- Y(1,3,9)=Y(1,3,8,20...)
- Y(1[1,2]₂)=Y(1[1,1,1...]₂)
- Y(1,4)=Y(1,3,9,27,81...)
- Y(1[2]₂)=Y(1[1,2,4,8...]₂)
- Y(1,5)=Y(1,4,16,64,256...)
- Y(1[3]₂)=Y(1[2[2,4,8...]₂]₂)
- Y(1,6)=Y(1,5,25,125,625...)
- Y(1[4]₂)=Y(1[2[4[4,8...]₂]₂]₂)
個人的な感想として、「予想より変則的」と思いました。これは別にY数列の構想が変だとか階差数列の定義がおかしいというような話ではなく、単にY数列と階差表記の相性が悪いだけだと思われます(Y数列のために作った階差表記がY数列と合わないという事は階差表記がおかしいと言えなくもないですが)。
変形Y数列[]
注意:このブロックの内容は全てフィクションであり、実在するいかなる概念とも無関係です。
これで終わってしまっては面白くないので、「階差表記に合った数列システム」について考えてみます。まず、「レベル\(n\)のネスト階差表記の初項の階差数列をレベル\(n+1\)の階差表記で表す」と決めたわけですから、レベル\(n\)と\(n+1\)の関係は常に一定である方が美しいです。よって、以下のような展開が理想的です。
- (1,3)=(1[1]₂)=(1[1[1[1[1[...]₁]₁]₁]₁]₁)=(1,2,4,8,16...)
- (1,4)=(1[1]₃)=(1[1[1[1[1[...]₂]₂]₂]₂]₂)=(1,3,10,37,151...)
- (1,5)=(1[1]₄)=(1[1[1[1[1[...]₃]₃]₃]₃]₃)=(1,4,20,126,992...)
- (1,6)=(1[1]₅)=(1[1[1[1[1[...]₄]₄]₄]₄]₄)=(1,5,35,350,4962...)
Y数列はレベル2のネストなので、上手く定義できればY数列を超えられるような気がしてきますね。
ところで階差表記は有限ラベル付き準ヒドラとよく似ています。fL構造を持つ表記では、標準形の書き方は以下の3種類がよく使われます(具体例は思いつかないので省略)。
- 最小値から最大値まで全部使う:[[[[]₄]₃]₂]₁
- 最小値と最大値のみ:[[]₄]₁
- 最大値のみ:[]₄
以下、それぞれ「バシク型」「ブーフホルツ型」「ベクレミシェフ型」とします。略称は頭文字をとってそれぞれ「B型」「B型」「B型」とします。
上記の4つの例はベクレミシェフ型ですが、以下のようにバシク型のものを考えることもできます。
- (1,2,5)=(1[1[1]₂]₁)=(1[1[1[1[1[...]₁]₁]₁]₁]₁)
- (1,2,5,16)=(1[1[1[1]₃]₂]₁)=(1[1[1[1[1[1[...]₂]₂]₂]₂]₂]₁)
- (1,2,5,16,68)=(1[1[1[1[1]₄]₃]₂]₁)=(1[1[1[1[1[1[1[...]₃]₃]₃]₃]₃]₂]₁)
- (1,2,5,16,68,400)=(1[1[1[1[1[1]₅]₄]₃]₂]₁)=(1[1[1[1[1[1[1[1[...]₄]₄]₄]₄]₄]₃]₂]₁)
有限ラベル付き準ヒドラの記事に書いてあるように、単にバシク型fL構造といっても展開の仕方にバリエーションがあり、それぞれ強さが違います。第1と第3に合わせると以下のような違いが生まれます。
- 第1準拠:(1[1[1[1]₂]₂]₁)=(1[1[1[1[1[1[...]₁]₁]₁]₁]₂]₁)
- 第3準拠:(1[1[1[1]₂]₂]₁)=(1[1[1[1[1[1[1[1[...]₂]₁]₂]₁]₂]₁]₂]₁)
Y数列に関する議論の中で階差を螺旋状に配置した「階差螺旋」が登場し、Lim[n→ω]Y(1,n)は螺旋の巻き数が増えていく、というのはY数列ガチ勢の中ではもはや常識かと思います。上記の第3準ヒドラ準拠の展開では階差螺旋の巻き数が増える展開方法になっているため、上手く定義できればY(1,n)=(1[1[1[1]₂]₂]₁)にできそうな気がしますね。
...要するに何が言いたいかっていうと、Y数列よりもっと強い数列を作れるんじゃないかって話です。
ところで(1[1[1[1[1[...]₅]₄]₃]₂]₁)の階差表記のレベルの部分だけを抜き出すと1,2,3,4,5...という列ができます。これを対角化する表記、例えば\(a_1[a_2,a_3,a_4...]_{(1,1)}=a_1[a_1[a_1[a_1[...]_{a_1+a_2+a_3+a_4}]_{a_1+a_2+a_3}]_{a_1+a_2}]_{a_1}\)のようなものを定義すればさらに先を考えることができます。まぁこの辺は、既存の構造の流用だと複雑さのわりにあまり強くならないので価値は低そうです。
余談[]
(1[1[1[1[1[...]₅]₄]₃]₂]₁)を数列に直したときの項は(1,2,5,16,68,400,3382,42337)まで計算されています。とはいっても手計算を1回やっただけなので合ってる自身は無いです。また、OEISには同じ数列は載っていませんでした。今のところ一般項や増加速度は不明ですが、階比(?)が等差数列より強そうなので階乗より強いかもしれません。
- \(a[b]_n=a,A^1_na+b\)
- \(a[b]_{n+1}=a[a+b]_n=a,A^1_na+a+b=a,(A^1_n+1)a+b\)
- \(A^1_{n+1}=A^1_n+1 A^1_1=1\)
- \(A^1_n=1+\sum_{k=1}^{n-1}1=\sum_{k=1}^n1=n\)
- \(a[b,c]_n=a,A^1_na+b,A^2_na+B^2_nb+c\)
- \(a[b,c,d]_{n+1}=a[a+b[a+b+c]_n]_n=a[a+b,A^1_n(a+b)+a+b+c]_n\)
- \(=a[a+b,(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+c]_n\)
- \(=a,(A^1_n+1)a+b,A^2_na+B^2_n(a+b)+(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+c\)
- \(=a,(A^1_n+1)a+b,(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a+(B^2_n+A^1_n+1)b+c\)
- \(\begin{cases}A^2_{n+1}=A^2_n+B^2_n+A^1_n+1 &A^2_1=1\\B^2_{n+1}=B^2_n+A^1_n+1&B^2_1=1\end{cases}\)
- \(B^2_n=\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}1+1\)
- \(=\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+A^1_n\)
- \(=\sum_{k=1}^nA^1_k\)
- \(=\frac{1}{2}n^2+\frac{1}{2}n\)
- \(A^2_n=\sum_{k=1}^{n-1}B^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}1+1\)
- \(=\sum_{k=1}^{n-1}B^2_k+B^2_n\)
- \(=\sum_{k=1}^nB^2_k\)
- \(=\frac{1}{6}n^3+\frac{1}{2}n^2+\frac{1}{3}n\)
- \(a[b,c,d]_n=a,A^1_na+b,A^2_na+B^2_nb+c,A^3_na+B^3_nb+C^3_nc+d\)
- \(a[b,c,d]_{n+1}=a[a+b[a+b+c[a+b+c+d]_n]_n]_n\)
- \(=a[a+b[a+b+c,(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+(A^1_n+1)c+d]_n]_n\)
- \(=a[a+b,(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+c,\)
- \(A^2_n(a+b)+B^2_n(a+b+c)+(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+(A^1_n+1)c+d]_n\)
- \(=a[a+b,(A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+c,\)
- \((A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a+(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)b+(B^2_n+A^1_n+1)c+d]_n\)
- \(=a,(A^1_n+1)a+b,(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a+(B^2_n+A^1_n+1)b+c,\)
- \(A^3_na+B^3_n(a+b)+C^3_n((A^1_n+1)a+(A^1_n+1)b+c)\)
- \(+(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a+(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)b+(B^2_n+A^1_n+1)c+d\)
- \(=a,(A^1_n+1)a+b,(A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a+(B^2_n+A^1_n+1)b+c,\)
- \((A^3_n+B^3_n+C^3_nA^1_n+C^3_n+A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)a\)
- \(+(B^3_n+C^3_nA^1_n+C^3_n+A^2_n+B^2_n+A^1_n+1)b\)
- \(+(C^3_n+B^2_n+A^1_n+1)c+d\)
- \(\begin{cases}A^3_{n+1}=A^3_n+B^3_n+C^3_nA^1_n+C^3_n+A^2_n+B^2_n+A^1_n+1 &A^3_1=1\\B^3_{n+1}=B^3_n+C^3_nA^1_n+C^3_n+A^2_n+B^2_n+A^1_n+1&B^3_1=1\\C^3_{n+1}=C^3_n+B^2_n+A^1_n+1&C^3_1=1\end{cases}\)
- \(C^3_n=\sum_{k=1}^{n-1}B^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}1+1\)
- \(=\sum_{k=1}^nB^2_k\)
- \(=A^2_k\)
- \(B^3_n=\sum_{k=1}^{n-1}C^3_kA^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}C^3_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}B^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}1+1\)
- \(=\sum_{k=1}^{n-1}C^3_kA^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}C^3_k+\sum_{k=1}^nC^3_k\)
- \(=\frac{1}{30}n^5+\frac{1}{8}n^4+\frac{1}{4}n^3+\frac{3}{8}n^2+\frac{13}{60}n\)
- \(A^3_n=\sum_{k=1}^{n-1}B^3_k+\sum_{k=1}^{n-1}C^3_kA^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}C^3_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}B^2_k+\sum_{k=1}^{n-1}A^1_k+\sum_{k=1}^{n-1}1+1\)
- \(=\sum_{k=1}^nB^3_k\)
- \(=\frac{1}{180}n^6+\frac{1}{24}n^5+\frac{5}{36}n^4+\frac{7}{24}n^3+\frac{16}{45}n^2+\frac{1}{6}n\)