上数 (じょうすう) とは、漢数字の大数に対する命数法の1つ。
概要[]
漢数字による数詞は日本語の数の単位で使用されている。現在一般的に使われているのは『塵劫記』の1634年 (寛永11年) 版に基づいており、「一から万までは、位が1つ上がると数詞が変わる」「万から無量大数までは、位が4つ上がると数詞が変わる」という中数万進に基づいて大きさが決定される[1]。
一方で、2世紀頃の後漢で徐岳によって著された『数術記遺』では、異なるルールで位が上がっていた。「一から万までは、位が1つ上がると数詞が変わる」については中数万進と同じであるが、「万から載までは、それまでの数詞を全て使っても表せない数が現れた時に初めて新しい数詞を使う」というルールとなる。これは「万以降は数詞の自乗が次の数詞となる」と同義である。より実用的には「それまでの最大の数詞が重なった場合に、新しい数詞を定義する」と言い換えられる[1]。
考え方[]
現在の数え方である中数万進の場合、例えば億に対しては、一億\(=10^{8}\)、十億\(=10^{9}\)、百億\(=10^{10}\)、千億\(=10^{11}\)と続け、その次の\(10^{12}\)は一万億ではなく一兆である。これに対し上数は一万億と続け、十万億\(=10^{13}\)、百万億\(=10^{14}\)、千万億\(=10^{15}\)と続ける。その次の\(=10^{16}\)は一億億となるが、これはそれまでに登場した最大の数詞が重なっているため、一兆と言い換える。
これは数学的には合理的である。例えば千万億兆は\(10^{31}\)であるが、これは千\(=10^{3}\)、万\(=10^{4}\)、億\(=10^{8}\)、兆\(=10^{16}\)であるため、全てを掛け合わせると千万億兆は\(10^{3+4+8+16}=10^{31}\)となる。ただし、人間が理解しやすいかどうかは別問題であり、実用的とは言えない。
大きさ[]
万以降は\(10^{4\times2^{n}}\)で増えていくため、非常に大きい値となる。『数術記遺』では載までが記載されているため、一載\(=10^{4096}\)であり、千万億兆京垓秭穣溝澗正載\(=10^{8191}\)である。以下の表では頭の一は省略されている事に注意。
数詞 | 大きさ |
---|---|
一 | \(10^{0}\) |
十 | \(10^{1}\) |
百 | \(10^{2}\) |
千 | \(10^{3}\) |
万 | \(10^{4\times2^{0}}=10^{4}\) |
億 | \(10^{4\times2^{1}}=10^{8}\) |
兆 | \(10^{4\times2^{2}}=10^{16}\) |
京 | \(10^{4\times2^{3}}=10^{32}\) |
垓 | \(10^{4\times2^{4}}=10^{64}\) |
𥝱 | \(10^{4\times2^{5}}=10^{128}\) |
穣 | \(10^{4\times2^{6}}=10^{256}\) |
溝 | \(10^{4\times2^{7}}=10^{512}\) |
澗 | \(10^{4\times2^{8}}=10^{1024}\) |
正 | \(10^{4\times2^{9}}=10^{2048}\) |
載 | \(10^{4\times2^{10}}=10^{4096}\) |
その他[]
師尾潤によれば、『単位の事典』では "中国の古単位" として載に\(10^{5096}\)、極に\(10^{10192}\)が当てられているが、この "中国の古単位" の具体的な文献名や出典は不明であり、それぞれ\(10^{4096}\)および\(10^{8192}\)の誤りではないか、としている[2]。また、上述の通り『数術記遺』に極は掲載されていない。
『大方広仏華厳経』に登場する数の大きさは上数と同じ考え方で計算される。ただしこれは仏典に現れる言葉であることを考えると、具体的に数詞として使われることを意図したものではないと考えられる。