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以下の項目と混同しないように注意してください:第1種シェルピンスキー数


第2種シェルピンスキー数 (Sierpiński Number of the Second Kind) とは、シェルピンスキーの合成数定理 (Sierpiński's Composite Number Theorem) を満たす正の奇数\(k\)である[1][2]。単にシェルピンスキー数と呼ばれる場合が多い[3]

概要[]

シェルピンスキーの合成数定理を満たす\(k\)とは、全ての自然数\(n\)に対して\(k\times2^{n}+1\)が合成数となる。第2種シェルピンスキー数は無数に存在することが1960年にヴァツワフ・シェルピニスキによって証明された[1][3]。似たような定義を持つリーゼル数は1956年に論文が出版されており、第2種シェルピンスキー数よりも早い[4]

\(k\)が第2種シェルピンスキー数ではない場合、反例として\(k\times2^{n}+1\)が素数となる値が存在する。\(k< 2^n\) である場合、これはプロス素数である[3]

シェルピンスキー問題[]

1962年にJ. Selfridgeによって、最小の第2種シェルピンスキー数は\(k=78557\)であると予想された[3]。しかし、それが真に最小の第2種シェルピンスキー数であるかどうかは未解決問題である[2]。最小の第2種シェルピンスキー数\(k\)を求めるのをシェルピンスキー問題 (Sierpiński problem) と呼ぶ[3]

\(k=78557\)より小さい候補は1983年時点で70個[3]、1996年時点で35個[2]、1997年時点で21個あり[3]、2002年時点で17個にまで絞られた[2]。同年、L. K. HelmとD. A. Norrisにより分散コンピューティングプロジェクトSeventeen or Bustが開始され、候補の絞り込みが進められている[2][5]。Seventeen or Bustには2010年よりPrimeGridが加わった。2016年4月のサーバーデータの消失により、オリジナルのSeventeen or Bustは終了したが、PrimeGridが作業を引き継いでいる[3]。現時点で残りの候補は5個となっている[2]

素数および拡張シェルピンスキー問題[]

2番目に小さな第2種シェルピンスキー数は\(k=271129\)であると予想されており、これは最小の第2種シェルピンスキー素数であるとも予想されている[2]。\(k=271129\)が最小の第2種シェルピンスキー素数であるかどうかという問題を素数シェルピンスキー問題 (Prime Sierpiński problem) と呼び、\(k=78557\)が1番目に、\(k=271129\)が2番目に小さい第2種シェルピンスキー数であるかどうかという問題を拡張シェルピンスキー問題 (Extended Sierpiński problem) と呼ぶ[3]

第2種シェルピンスキー素数は無数に存在する[2]

\(k\)とその反例および候補の一覧[]

以下の表でステータス欄に素数と書かれていない候補は合成数である。

シェルピンスキー問題の候補と反例の一覧[2][6][7][8]
\(k\) 反例 反例の近似値 ステータス
\(4847\) \(4847\times2^{3321063}+1\) \(1.84486\times10^{999743}\)
\(5359\) \(5359\times2^{5054502}+1\) \(2.78117\times10^{1521560}\) 知られている最小のコルベール数
\(10223\) \(10223\times2^{31172165}+1\) \(5.06250\times10^{9383760}\) 知られている最大のコルベール数
\(19249\) \(19249\times2^{13018586}+1\) \(1.48436\times10^{3918989}\) コルベール数
\(21181\) 未発見
\(22699\) 未発見 素数
\(24737\) 未発見
\(27653\) \(27653\times2^{9167433}+1\) \(5.72772\times10^{2759676}\) コルベール数
\(28433\) \(28433\times2^{7830457}+1\) \(7.77284\times10^{2357206}\) コルベール数
\(33661\) \(33661\times2^{7031232}+1\) \(1.84332\times10^{2116616}\) コルベール数
\(44131\) \(44131\times2^{995972}+1\) \(1.23477\times10^{299822}\)
\(46157\) \(46157\times2^{698207}+1\) \(8.21146\times10^{210185}\)
\(54767\) \(54767\times2^{1337287}+1\) \(1.73113\times10^{402568}\)
\(55459\) 未発見
\(65567\) \(65567\times2^{1013803}+1\) \(8.49923\times10^{305189}\)
\(67607\) 未発見 素数
\(69109\) \(69109\times2^{1157446}+1\) \(6.36643\times10^{348430}\)
\(78557\) 未発見 最小の第2種シェルピンスキー数候補
\(79309\) 未発見 素数
\(79817\) 未発見 素数
\(90527\) \(90527\times2^{9162167}+1\) \(1.11960\times10^{2758092}\)
\(91459\) 未発見
\(94373\) \(94373\times2^{3206717}+1\) \(9.57470\times10^{965322}\)
\(99739\) \(99739\times2^{14019102}+1\) \(1.63357\times10^{4220175}\)
\(123287\) \(123287\times2^{2538167}+1\) \(3.10400\times10^{764069}\)
\(131179\) 未発見
\(147559\) \(147559\times2^{771309}+1\) \(4.38931\times10^{771309}\)
\(152267\) 未発見 素数
\(154801\) \(154801\times2^{1305084}+1\) \(4.17479\times10^{392874}\)
\(156511\) 未発見 素数
\(161041\) \(161041\times2^{7107964}+1\) \(3.79347\times10^{2139715}\)
\(163187\) 未発見
\(168451\) \(168451\times2^{19375200}+1\) \(3.96700\times10^{5832521}\)
\(193997\) \(193997\times2^{11452891}+1\) \(1.03721\times10^{3447669}\)
\(198677\) \(198677\times2^{2950515}+1\) \(6.54341\times10^{888198}\)
\(200749\) 未発見
\(202705\) \(202705\times2^{21320516}+1\) \(1.39926\times10^{6418120}\)
\(209611\) 未発見
\(211195\) \(211195\times2^{3224974}+1\) \(1.71364\times10^{970819}\)
\(219259\) \(219259\times2^{1300450}+1\) \(6.29243\times10^{391479}\)
\(222113\) 未発見 素数
\(225931\) 未発見 素数
\(227723\) 未発見
\(229673\) 未発見
\(237019\) 未発見 素数
\(238411\) 未発見
\(250463\) \(250463\times2^{1316921}+1\) \(1.32332\times10^{396438}\)
\(258317\) \(258317\times2^{5450519}+1\) \(1.32767\times10^{1640775}\)
\(265711\) \(265711\times2^{4858008}+1\) \(3.56111\times10^{1462411}\)
\(271129\) 最小の第2種シェルピンスキー素数候補

コルベール数[]

以下の項目と混同しないように注意してください:メガ素数

シェルピンスキー問題に関連し、\(k<78557\)の反例として示された素数のうち、十進数展開が100万桁を越える素数をコルベール数 (Colbert Number) と呼ぶ。これは、この問題に長年貢献したStephen T. Colbertに敬意を表して付けられた名称である[9]

なお、Wolfram MathWorldでは単に「十進数展開が100万桁を越える素数」としか書かれていないが[9]、この定義はメガ素数と被る[10]。また、Wolfram MathWorldではメガ素数という用語は掲載されていない一方で、コルベール数の例はシェルピンスキー問題の反例として示され、かつ\(k<78557\)である数のみが掲載されている[9]。そしてPrime Glossaryではメガ素数が「100万桁を越える素数」の意味で掲載されている一方で[10]、コルベール数は第2種シェルピンスキー数の説明ページを参照する旨しか記載されていない[11]。このことから本Wikiではコルベール数を「メガ素数のうち、\(k\times2^{n}+1\)の形式で表され、かつ\(k<78557\)である数」とする。\(k< 2^n\)である場合、これはプロス素数である。現時点で知られている全てのコルベール数はプロス素数である。

コルベール数は現時点で以下の6個が知られている。残り5個の\(k\)に対し、コルベール数があるかどうかが未知である[2][6][9]

大きさ順のコルベール数の一覧
\(k\) \(n\) 近似値
\(10223\) \(31172165\) \(10223\times2^{31172165}+1\) \(5.06250\times10^{9383760}\)
\(19249\) \(13018586\) \(19249\times2^{13018586}+1\) \(1.48436\times10^{3918989}\)
\(27653\) \(9167433\) \(27653\times2^{9167433}+1\) \(5.72772\times10^{2759676}\)
\(28433\) \(7830457\) \(28433\times2^{7830457}+1\) \(7.77284\times10^{2357206}\)
\(33661\) \(7031232\) \(33661\times2^{7031232}+1\) \(1.84332\times10^{2116616}\)
\(5359\) \(5054502\) \(5359\times2^{5054502}+1\) \(2.78117\times10^{1521560}\)

その他[]

2016年11月に発見された、\(10223\)が第2種シェルピンスキー数ではない反例、かつ知られている最大のコルベール数でもある \(10223\times2^{31172165}+1\)は、発見時点で知られている7番目に大きな素数であった。そして2023年5月に\(\Phi(3,-465859^{2^{20}})\)が発見されるまでの6年半、知られている最大の非メルセンヌ素数でもあった[12]

出典[]

  1. 1.0 1.1 "W. Sierpinski. "Sur un problème concernant les nombres". Elemente der Mathematik, 1960; 15, 73-74.
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 "Sierpiński Number of the Second Kind". Wolfram MathWorld.
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 Wilfrid Keller. "The Sierpiński Problem: Definition and Status" Proth Search Page.
  4. H. Riesel. "Naagra stora primtal". Elementa, 1956; 39, 258-260.
  5. "Seventeen or Bust". The PrimePages.
  6. 6.0 6.1 "Sebenteen or Bust statistics". PrimeGrid.
  7. "Prime Sierpinski Problem statistics". PrimeGrid.
  8. "Extended Sierpinski Problem statistics". PrimeGrid.
  9. 9.0 9.1 9.2 9.3 "Colbert Number". Wolfram MathWorld.
  10. 10.0 10.1 "megaprime". Prime Glossary.
  11. "Colbert number". Prime Glossary.
  12. "Largest Known Primes". The PrimePages.

関連項目[]

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