阿僧祇 (あそうぎ) は、日本語の数の単位の1つである。通常、一阿僧祇で\(10^{56}\)を表す。
由来[]
恒河沙より先は、全て仏典を由来とする仏教用語である。阿僧祇は「数えきれないほどの大きな数」を意味するAsaṃkhyaを音訳したものである。これは例えば『今昔物語集』2巻3話「過去の無量阿僧祇劫に国王有りき」などの表現に使われている[1]。なお、阿僧祗は誤字である[2]。
阿僧祇が具体的な数の単位として登場したのは『算学啓蒙』からであり、日本語の数の単位としての根拠となる『算法統宗』と『塵劫記』にも掲載されている。また、この時那由他との大小関係が逆転している[2]。
文献による違い[]
一般的に一阿僧祇\(=10^{56}\)として使用されているのは、現在の日本で使われている数の単位が『塵劫記』の1634年 (寛永11年) 版に基づいるためである。これは時代や文献によって異なる。
また、『大方広仏華厳経』の各訳でも阿僧祇が登場するが、定義が異なり、たまたま表記が一致するだけの別物である。
文献 | 著者 | 時代 | 方式 | 大きさ | |
---|---|---|---|---|---|
華厳経 | 六十華厳[3] | 仏陀跋陀羅 (訳) | 418年から420年 | 上数 | \(10^{10\times2^{102}}=10^{50706024009129176059868128215040}\approx10^{10^{31.70506}}\) |
八十華厳[4] | 実叉難陀 (訳) | 695年から699年 | \(10^{7\times2^{103}}=10^{70988433612780846483815379501056}\approx10^{10^{31.85119}}\) | ||
四十華厳[5] | 般若三蔵 (訳) | 795年から798年 | \(10^{7\times2^{123}}=10^{74436767763955288882613195375699296256}\approx10^{10^{37.87179}}\) | ||
算法統宗[2] | 程大位 | 1592年 | 中数万万進 | \(10^{104}\) | |
塵劫記[2] | 吉田光由 | 初版 (1627年) | 万万進 | \(10^{31}\) | |
寛永8年版 (1631年) | 中数万万進 | \(10^{64}\) | |||
寛永11年版 (1634年) | 中数万進 | \(10^{56}\) |
使用例[]
- 知られている最小の7倍完全数は約1阿僧祇である[6]。 (\(141310897947438348259849402738485523264343544818565120000\))
- モンスター群の位数は約81阿僧祇である[7]。 (\(808017424794512875886459904961710757005754368000000000\))
- ショートスケールのHundred-septendecillionは1阿僧祇に等しく、One-octodecillionは10阿僧祇に等しい。
- 銀河系の総質量をエネルギーに換算すると約2070阿僧祇Jである[8]。
出典[]
- ↑ 新村出 (編者). (2021, 第4刷) "広辞苑 第七版, あそうぎ【阿僧祇】 (p57)". 岩波書店. ISBN: 978-4-00-080131-7
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 高杉親知. (Oct 2, 2002) "無量大数の彼方へ". 思索の遊び場.
- ↑ "T09n0278_029 大方廣佛華嚴經 第29卷, 心王菩薩問阿僧祇品第二十五". CBETA 漢文大藏經.
- ↑ "T10n0279_045 大方廣佛華嚴經 第45卷, 阿僧祇品第三十". CBETA 漢文大藏經.
- ↑ "T10n0293_010 大方廣佛華嚴經 第10卷, 入不思議解脫境界普賢行願品". CBETA 漢文大藏經.
- ↑ "A007539 a(n) = first n-fold perfect (or n-multiperfect) number." On-Line Encyclopedia of Integer Sequences.
- ↑ Eric W. Weisstein. "Monster Group". Wolfram MathWorld.
- ↑ Edoardo Carlesi, Yehuda Hoffman & Noam I. Libeskind. "Estimation of the masses in the local group by gradient boosted decision trees". Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 2022; 513 (2) 2385-2393. DOI: 10.1093/mnras/stac897